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2007年 胸部外科医処遇アンケート調査
  

日本胸部外科学会 理事長 松田 暉
処遇改善委員会 委員長 許 俊鋭
1.2007年胸部外科医処遇アンケート調査結果と今後の取り扱いについて

 平成14年〜16年の3年間の「胸部外科医の処遇調査」の結果、胸部外科医の生活環境・処遇は極めて劣悪であることが明らかになった。胸部外科医の処遇に関して平成18年1月に認定施設(関係施設)施設長に対して理事長名で「基本的には法定労働時間(週40時間)を著しく逸脱すべきではなく、労働基準法のもと、連続勤務時間は24時間、当直明けは休業または半日勤務とするなどの労働環境の改善に配慮」を要望した。
前回調査より3年を経て、この間の処遇の改善状況や専門医制度の会員に与えた影響、会員が学会に何を期待しているか、などを調査した。1511名(19%)の胸部外科学会員と261施設(36.8%)の胸部外科施設長より回答が寄せられた。
以下の会員アンケート結果サマリーに見られる如く、この間の日本胸部外科学会が進めてきた専門医制度の改革ならびに施設集約化の方向が会員によって概ね指示されていることが明らかになった。
(1) 処遇改善で胸部外科学会に期待すること
  @専門医の診療報酬への反映、A労働条件の改善、B医療紛争に対する学会のサポート
(2) この1.5年の間に労働基準法遵守に関する姿勢変化
  @なかった(82%)、Aあった(12%)
(3) 専門医取得必要手術症例数
  @50例はちょうどよい(49%)、A50例より多い方がよい(31%)、B20例がよかった(8%)
(4) 専門医取得条件変更に関する影響
  @特に影響なし(59%)、A取得見通しが遠のいた(25%)、B取得見通しが消失した(4%)
(5) 専門医更新条件の変更
  @手術数の基準があるほうがよい(66%)、A手術数の基準なしのままがよかった(14%)
(6) 専門医更新条件の手術数基準
  @術者+指導的助手の手術数がよい(78%)、A術者のみの手術数がよい(13%)
(7) 初期臨床研修制度導入後の勤務時間・労働量の変化
  @減った(49%)、A増えた(44%)、B変わらない(3%)
(8) 医師の負担を減らすにはどうしたらいいか。(複数回答)
  @医師以外の職員に業務を移す(85%)、A医師を増やす(45%)、B組織の効率化(29%)
(9) 初期臨床研修制度導入後の給与面での改善
  @不変(75%)、A改善された(11%)
(10) 施設の集約について
  @賛成(68%)、Aどちらでもない(16%)、B反対(13%)
(11) 施設の集約に賛成の理由。(複数回答)
  @治療成績が改善 (72%)、A労働環境が改善(62%)、B修練医教育が充実(58%)
(12) 外科医の選別について
  @賛成(86%)、A反対(6%)
(13) 病院内の給与面で他科と差があるか。
  @横並び、一律である(86%)、A冷遇されている(10%)、B優遇されている(2%)

2.過去の処遇調査について
 平成14年〜16年の3年間に亘り、胸部外科学会員を対象に「胸部外科医の処遇調査」を実施して参りました。その結果、胸部外科医の生活環境・処遇は極めて劣悪であることが明らかになり、日本胸部外科学会としては胸部外科医の処遇に関して平成18年1月に認定施設(関係施設)施設長に対して理事長名で以下の要望を出させていただきました。胸部外科医の「当直明け勤務実態」の過酷さに対して、基本的には法定労働時間(週40時間)を著しく逸脱すべきではなく、労働基準法のもと、連続勤務時間は24時間、当直明けは休業または半日勤務とするなどの労働環境の改善に配慮を要望するものであります。また、かかる状況の背景にある周術期管理医師や関連コメディカルの不足にも対応し、改善に取り組んで頂きたいとの要望を送付させていただきました。
3.今回のアンケート調査について
 前回調査より3年を経ましたが、この間、胸部外科を取り巻く多くの問題が噴出し、胸部外科のみならず外科、産婦人科、小児科などのリスクの高い専攻領域を希望する若手医師が激減していることが報道されてまいりました。しかし、人口の高齢化により循環器疾患や肺癌などの胸部外科手術を必要とする症例は増加の一途を辿っており、胸部外科の将来の担い手の育成の手を休めることはできません。一方で、症例数やアウトカムに関する情報公開や、いまだ変化しつつある専門医制度の状況を見ますと施設および外科医の集約と選別の流れが強まりつつあります。医療費や医療の安全の面から見ても、医師に要求される負荷が増加しつつある反面、処遇の改善が不十分であろうと予想されます。
 今回のアンケート調査では激変しつつある社会環境の中で、胸部外科医を取り巻く社会環境はどのように変化しつつあり、将来に向けてどのような方策を講じるべきかを明らかとすることを目的として企画いたしました。


本アンケートは、日本胸部外科学会 胸部外科医処遇改善委員会の委員の協力により作成した。
日本胸部外科学会 胸部外科医処遇改善委員会委員長
許 俊鋭 埼玉医科大学名誉教授 東京大学 心臓外科

日本胸部外科学会 胸部外科医処遇改善委員会委員
乾 健二 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター 呼吸器外科
角 秀秋 福岡市立こども病院・感染症センター 心臓血管外科
島本光臣 静岡市立静岡病院 心臓血管外科
鶴丸昌彦 順天堂大学医学部 消化器外科講座上部消化管外科学
西田 博 東京女子医科大学心臓病センター 心臓血管外科
中島 淳 東京大学医学部附属病院 呼吸器外科
八木原俊克 国立循環器病センター 心臓血管外科
吉村博邦 北里大学病院 胸部外科

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